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城戸朱理のブログ

2018年09月21日

韓国、廣州窯の白磁

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骨董の世界、とりわけ茶道具に関しては箱書きが重視されるが、それはこれまで誰が所持してきたかという伝来を尊ぶからで、それとは別に真贋の保障となる鑑定の箱書きもある。

この箱書き、作家物の場合は遺族がすることが多い。


陶磁学者や陶芸家が、古作の箱書きをすることもあるが、なかでも絶大な信頼が寄せられているのは古山子(小山冨士夫)だろう。

世界的な陶磁学者だった古山子は、その晩年、作陶にいそしんだが、本人が酒豪だっただけに酒器は、とりわけ魅力がある。

小山さん自身は、中国の明時代の染付や高麗青磁、李朝、古唐津や初期伊万里など、さまざまな古器で晩酌されていたようだが、そのコレクションは書籍や雑誌で何度か紹介されている。


そのなかで、私が気になったのは、現代の韓国で焼かれたという廣州窯の白磁盃だった。

小山さんは次のように書いている。



「上の左は韓国の広州で今つくっている盃だが、
私のつくるものなどより、はるかに酒がおいしく、そしてのみいい。
晩酌はたいがいこれにしている。
ソウルの街で日本金にして二百円で買ったものである」



この記述がある『ぐい呑み楽し』(光芸出版)が刊行されたのは、昭和46年(1971)。

『値段の風俗史』(朝日新聞社)によると、当時はタクシーの初乗りが100円、ビールの大ビンが120円、映画の封切り館の料金が700円だったそうだから、200円は今なら800円くらいの感じだろうか。

ぐい呑みの値段としては、破格に安い。


韓国には、そんな手頃で使いやすい焼き物があるのかと羨ましく思ったものだが、10年ほど前にソウルを訪れ、仁寺洞(インサドン)を歩いているとき、廣州窯のお店を見つけた。

当時のソウルは、どちらを向いてもハングルばかりで、中を覗いてみたないと何の店か、分からなかったが、廣州窯だけは珍しくも漢字の看板が出ていたので、ひと目で分かった。


これが小山さんが書いていた廣州窯かと、いささか興奮し、ぐい呑みや小皿を求めたのだが、白磁のぐい呑みは3000ウォンと3500ウォンで、300〜350円ほど。

小山さんよりも安く買ったことになる。

口径15cm、馬盥型の白磁皿も、重宝している。


翌年、再訪して求めた陶器の筒盃は、やや高かったが、それでも1000円ほどだったろうか。

こちらは灰色の胎土に白化粧土をかぶった粉引と同手の焼き物で、使うほどに経年変化が楽しめる。


たしかに使い勝手はいいし、韓国に行くたびに食器類も少しずつ買い足していこうと思っていたのだが、次に行ったら、廣州窯のお店じたいがなくなっていた。


韓国にも久しく行っていない。

『リナ』に続く長編小説『ライティングクラブ』の邦訳が出たばかりの作家、カン・ヨンスクさんから久しぶりに連絡をいただいたが、また韓国を旅してみたいものである。
posted by 城戸朱理 at 16:38| 骨董・工芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月07日

ブログ、夏休みのお知らせ




いつも、このブログにお付き合いいただき、ありがとうございます。

豪雨、台風、地震と異常な自然災害が続いており、東京が無事なのが不思議なほどですが、私は、さまざまな仕事と、かねてから準備してきた長篇詩の書き下ろし、そして、新詩集の編集に専念すべく、ブログの更新を、しばらくお休みさせていただきます。


次の更新は、9月20日(木)からを予定しています。

再開のおりには、また、おつきあい下さいますよう、お願い申し上げます。
posted by 城戸朱理 at 23:37| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月06日

天変地異の国



台風21号は、まるで見えない怪獣か、凶悪な意志が通りすぎていったかのようだった。

鎌倉では日が暮れるとともに風が吹き荒れ、雨が激しくなったが、大阪や神戸のような被害があったわけではない。

それだけに、SNSにアップされる写真や動画には絶句するしかなかった。

電信柱や立木をなぎ倒し、自動車や屋根を吹き飛ばす強風なぞ、これまで見たことがない。

早く去ってくれと祈ることしかできなかった。



翌日、9月5日には、台風一過の晴天が広がったが、残暑はきびしい。

停電や断水に見舞われている被災地の方々は、苦労されていることだろう。



私は前日に選考を終えていた「岩手日報」投稿欄の選評2回分を書き終えてメールし、小憩してから、午後は「映画芸術」から依頼された原稿を執筆。

400字詰め原稿用紙で8枚を2時間ほどで書き上げることができた。


バンビことパンクな彼女は仕事に追われていたので、夕食は久しぶりに私が準備する。

鶏胸肉に豆腐と銀杏を入れた松茸の鍋を仕立て、新さんまを焼き、オクラを茹で、さらに新宿の老舗洋食屋アカシア風に、ロールキャベツをホワイトシチューにしたのだが、夕食の準備が終わってもバンビの仕事が終わらない。

感心なことに、最近のバンビは、やたらと働き者である。


関西の被災状況を気にしながら、就寝したのだが、明け方、バンビに「北海道で大地震だよ!」と起こされた。

震源は内陸の胆振地方、震度は当初、6強と発表されたが、最大震度は7に修正された。

SNSで状況をチェックしたのだが、北海道が全域停電という事態に言葉を失った。


西日本の豪雨災害、台風21号、そして北海道大地震と、日本は、天変地異が日常になってしまった感がある。

これだけの巨大地震である。

北海道の方々は、くれぐれも余震に注意していただきたいと思う。
posted by 城戸朱理 at 18:17| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月05日

崎陽軒のシウマイ弁当

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首都圏で暮らしていると、あって当たり前と思ってしまうのが崎陽軒のシウマイだ。

鎌倉だと駅前の東急ストアに崎陽軒の売場がある。

そして、崎陽軒のシウマイ弁当といえば、1日に2万3千食と、日本でいちばん売れている駅弁である。

だが、崎陽軒のシウマイのファンが意外に多いのは、最近になってようやく気がついた。

中沢けいさんも好物だとツイートしていたし、吉増剛造さんも横浜駅では必ずシウマイ弁当を買うとおっしゃっていたから、身近なところにも崎陽軒ファンがいるし、
何より驚いたのは、京都の勤務になって、崎陽軒のシウマイが手に入らないものだから、東京に出張するときは必ず崎陽軒のシウマイを買って帰るという人にも出会ったことである。

そう、崎陽軒のシウマイは関西では売っていないのだ。

当たり前である。

崎陽軒のシウマイは横浜名物。

売場が多いのは、神奈川県と東京都で、ほかには千葉県と埼玉県にしか出店していない。

気づいてみたら、どこにでもあるわけではなかったのである。



今年は崎陽軒創業110周年、シウマイ誕生90周年。

それを記念して「味くらべシウマイ弁当」が発売された。

昔ながらのシウマイ、特製シウマイ、えびシウマイ、かにシウマイ、それにシウマイまんと、崎陽軒のシウマイ五種が勢揃い、それ以外のおかずはシウマイ弁当と同じだが、御赤飯がお祝い気分を高める。

昨年は、唐揚げを増量した「忍法唐揚げの術シウマイ弁当」や筍煮を増量した「ドリーミング筍シウマイ弁当」が2日間限定で発売されたが、崎陽軒の期間限定シウマイ弁当は、すでにあるものの比率を変えただけなのに、なぜかそそるものがある。


そして、何よりも「味くらべシウマイ弁当」が特別なのは、陶器の醤油入れ「ひょうちゃん」が入っていることだろう。


「ひょうちゃん」にはコレクターがいて、骨董市で1000円くらいで売られていることがある。

しかし、崎陽軒の「昔ながらのシウマイ」15個入りは税込みで620円だから、1240円出して2パック買えば、「ひょうちゃん」2個にシウマイ30個が付いてくるわけだから、骨董市で買う必要はない。

ちなみに「ひょうちゃん」は新聞連載漫画「フクちゃん」で知られる漫画家、横山隆一さんの絵で始まった。

横山さんは鎌倉にお住まいだったから、鎌倉で暮らす人間は「ひょうちゃん」にも親しみを感じるところがある。

ちなみに鎌倉市役所前の横山隆一邸は、今ではスターバックスになっているが、横山さんの生前は小林秀雄ら鎌倉文士がよく集って宴会をしていたそうだ。

ひょうちゃんは、1996年に蓋がコルクからプラスチックに変わったので、コルクの蓋のひょうちゃんがあったら貴重である。(ホントか?)


というわけで、ひょうちゃんは捨てずに取ってあるのだが、「んふ! 貰ってもいらないよ!」とバンビことパンクな彼女には不評である。
posted by 城戸朱理 at 18:48| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月04日

光原社で買ったもの〜角盆

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配膳用に使っていた鎌倉彫りの長方盆を落として割ってしまったものだから、大きめの丸い独楽盆を使っていたのだが、丸盆は収納がむずかしい。


角盆なら食器棚に収まるので、去年から探していたのだが、4月に盛岡に行ったとき、光原社の支店、北ホテル一階の「北の光原社」で、ようやく理想の長方盆と出会うことができた。

朴訥としながらも手強いデザインの、このお盆は、柳宗悦、河井寛次郎、松本民芸家具の池田三四郎ら、民芸運動を主導した方々が所持されていたもので、オリジナルは19世紀のアメリカ製なのだとか。

柳宗悦がハーバード大学の客員教授として渡米したおりに見つけたものだろうか。


光原社では、盛岡の木地師に頼んで同じ形の物を作り、自社工房で仕上げたそうだが、その最後の一枚だという。

特別に製作されたものだけに安くはなかったが、探していた角盆であり、しかも力強い形をしている。


これなら、一生使えるだろう。

少し迷ってから購入を決めたが、かさばるので、宅急便で送ってもらった。


目下、わが家は片付けの真っ最中なので、それが終わったら、このお盆を使いたいと思っている。
posted by 城戸朱理 at 14:17| 骨董・工芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月03日

英訳『城戸朱理詩集』の打ち合わせ@銀座スタア・バー

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コート・ドールで御馳走になったあとは、タクシーで銀座に移動し、スタア・バーで打ち合わせとなった。

なんと、アメリカで私の訳詩集を刊行したいという話だった。



スタア・バーは、1996年の「IBA 世界カクテルコンクール」で優勝し、世界チャンピオンとなった岸久さんの店だけに、世界的に知られた名店であり、海外からのお客さんも多い。

この日も、海外からの旅行者がカウンターを占領していた。


岸さん仕込みのカクテルは、さすがに素晴らしいが、ジントニックを飲んでいるときに、いきなり話を切り出されたものだから、一瞬、頭が真っ白になった。

目下、三冊の新詩集と格闘している最中だけに、
それ以外のことを考える余裕がなかったのかも知れないが、もし英訳の選詩集『Selected Poems』が実現するとしたら、嬉しい話である。


さっそく、具体的な進行を話し合ったのだが、私も、私に出来ることを進めていきたいものだ。
posted by 城戸朱理 at 00:42| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

新詩集に向けて



昨年末から今年初めにかけて、噴火するかのように書き下ろした170余篇の詩篇を少しずつ見直しては、推敲の手を入れ始めた。

来月なかばからは、まとまった時間が取れるので、かねてから準備していた長篇詩の書き下ろしにも着手できるだろう。


それらの詩篇は『火山系』『水都』『白鳥伝説』の三冊に揺らぎながら結実していくはずなのだが、版元も決まり、装幀に思いがけない美術家を提案された。

どんな造本になるのか、私自身、夢を見るような気持ちでいるが、しばらくは、推敲をしながら清書をして、詩に没頭したい。
posted by 城戸朱理 at 00:42| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月02日

三田のコート・ドールで、その2

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魚料理は対馬産の甘鯛のムニエル、ポロ葱とポテトのスープ。

かりっと焼かれた皮と、甘く崩れる身の対比が絶妙な甘鯛は、あまりの美味しさにワインを飲むのを忘れるほどだった。

ポロ葱とポテトのスープも柔らかな旨みが沁みるようで、甘鯛にこよなく合う。

本当に美味しい料理は、驚きのあまり黙り込んだり、笑い出してしまうことがあるが、私は笑ってしまった。


ブルゴーニュの赤ワインをグラスでもらって肉料理に備える。

国産牛しっぽの煮込み赤ワインソースも、斉須シェフの得意料理。

添えられているのは、なんと人参のムースで、コリアンダーが香り、人参がこんなに美味しくなるのかという驚きがある。

4時間煮込んだという牛テールの煮込みは、これまた足し算も引き算もしない旨みとしか言いようがない。



バンビことパンクな彼女は、初めてのコート・ドールだけに、旧友が気をつかって、
赤ピーマンのムース、梅干しと紫蘇の冷製スープ、季節の野菜のエチュベ、和牛テールの煮込み赤ワインソースと、
斉須シェフのスペシャリテのコースにしてくれたのだが、今になると何ひとつ変えることができないクラシックな斉須流フレンチを味わった気分になった。

新奇さはないが、どの料理も間違いなく美味しい。

友人は、思い出すとまた食べたくなる、他にない料理と言っていたが、まったく同感である。


デセールは、私が白ワインのムース、友人が酸果桜桃のアイスクリームケーキ、そしてバンビが柑橘茶に泳ぐ白桃。

食後には、ダブルエスプレッソをもらった。
posted by 城戸朱理 at 11:24| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

三田のコート・ドールで、その1

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旧友からバンビことパンクな彼女と一緒にフレンチに招待された。

仕事がてらではあるのだが、なんと三田のコート・ドールである。


コート・ドールといえば、孤児院育ちの天才料理人、ベルナール・パコーとともにパリの名店ランブロワジーを立ち上げた斉須政雄さんがオーナー・シェフ。

ランブロワジーはミシュランの三つ星を20年以上キープし、フランスの三つ星のなかでも別格とされる店だが、斎須さんは帰国して、32年前にコート・ドールを開店した。



最初はお勧めのシャンパンで乾杯する。

ワインはミネラルがしっかりと感じられるブルゴーニュの白をボトルで。


コースはコート・ドールのスペシャリテ、まずは赤ピーマンのムースから。

フレッシュ・トマトのソースがしかれたベルナール・パコー考案の濃厚なムースは、クラシックなフレンチの味である。


スープは夏らしく、梅干しと紫蘇の冷製スープ。

酸味が強く、食欲をそそるが、これは、ほかにはない目が覚めるような鮮烈な味わい。


そして、季節の野菜のエチュベ、コリアンダー風味。

これもコート・ドールの名物だが、野菜を塩とレモンとコリアンダーだけで蒸し煮にしたシンプルな料理で、酸味が強く、ぶれない。


今まで経験したことのないフレンチに、バンビが目を丸くしていた。


最近の新しい調理法を使うわけでもなく、食材を複雑に組み合わせるわけでもない。


斉須シェフの料理には、揺らぐことがない芯がある。
posted by 城戸朱理 at 11:16| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月01日

「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)



8月30日に三田のフレンチに招待されたので、バンビことパンクな彼女と相談し、東京に行く前に、横浜の109CINEMASで、話題の「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)を見ることにした。

ずっと見たいと思っていたのだが、製作費300万円、しかも内150万円はクラウドファンドで集めたという低予算ながら、今や、全国200館以上で上映され、観客動員100万人を突破した破天荒な記録破りの作品である。


しかも、いきなり37分ものワンカット・ワンシーンのゾンビものサバイバルスリラーから始まる新機軸。

当然、カメラは手持ちだから画面は揺れるし、自主制作っぽいキッチュさがあるのだが、それからが爆笑の渦。

ワンカット・ワンシーンの奇妙な間の種明かしがされていくのだが、前代未聞、一度かぎりの方法が大当たりしたとしか言いようがない。

これはゾンビ映画なのか、それともコメディなのか、はたまた映画愛がテーマなのか。

笑いっぱなしで、お腹が痛くなった。


2度目を見に行ったら、シリアスなはずの前半37分でも、笑いをこらえられないだろう。


ちなみに「幻を見るひと」がモントリオール世界映画祭に招待され、現地入りした井上春生監督は、モントリオールで「カメラを止めるな!」の撮影をした曽根剛さんと意気投合、動画まで送ってくれたが、曽根さんは、よく全力疾走までして37分の撮影をしたものだと感心した。

曽根さんは途中でこけたりもしているのだが、それさえも笑いに転化するアイデアが素晴らしい。


見終わってからもしばらくは、笑いが込み上げてくる作品だった。


ハリウッドでのリメイクが決定している韓国映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」(ヨン・サンホ監督)がシリアスなゾンビ映画の新機軸だったとすると、
上田慎一郎監督の「カメラを止めるな!」は、「ショーン・オブ・ザ・デッド」(エドガー・ライト監督)以来のゾンビ・コメディの傑作だろう。


それにしても、ゾンビ映画の裾野の広さには、驚くしかない。

ジョージ・A・ロメロ監督が創造した「生きている死者」は今や映画のみならず、さまざまな領域で、ひとつのジャンルを形成している。

それは、20世紀が生み、21世紀になっても成長を続ける、この時代の「恐怖」の形なのだろうか。
posted by 城戸朱理 at 13:17| エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする