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城戸朱理のブログ

2016年01月12日

笠井叡「太宰治を踊る」@天使館

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6時半の開場とともに入ると、天使館は壁面の鏡が覆われ、白い壁になっていた。

「太宰治を踊る」は、笠井叡による「日本現近代文学シリーズ」の第一弾。


舞台は、森山大道の写真のプロジェクターによる映写と原仁美による太宰治「ヴィヨンの妻」の朗読で始まった。

映写のために一面の白壁にされたわけだが、同時に、投影の邪魔になる位置には客席を設置できないので、今回の舞台は、30人限定である。


笠井叡は、白いスーツ姿で現れ、踊り始める。


笠井叡とともに、森山大道の写真に黒く浮き出すかのような笠井さんの影が踊り、さらに「ヴィヨンの妻」の朗読が絶え間なく聞こえてくるものだから、最初は、あまりの濃密さに、何が起こっているのか、分からなくなるほどだった。

では、いったい何が起こっていたのか?

笠井叡は「ヴィヨンの妻」を踊ろうとしたのだろうか?


それはまったく違った。


「みなさん、本当の戦争を始めませんか」

「そんなものは、神代の昔から、とうに始まってたんでさ」

「本当の戦争は、本当の言葉から始まるんです」


「ヴィヨンの妻」とは、およそ関わりがなさそうな言葉を発しながら、一瞬も留まることなく、空間を切り裂く笠井叡は、今や不可視のものとなった作家の身体性と格闘するかのようだった。


そう、これは太宰治の作品世界を踊るのではなく、作品を書いた作家の身体を踊ろうとする稀有な試みなのだろう。


一時間を超える公演は、あっという間だったが、このシリーズがどんな展開を見せてくれるのか、目が離せない。
posted by 城戸朱理 at 12:24| エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする