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城戸朱理のブログ

2016年11月07日

静かな仕事



最近、「静かな仕事」をしたいという想いが強くなった。


ひそやかに、誰にも伝えず、毎日、少しずつ進めていくような仕事である。


もちろん、文筆業で生きている以上、新聞社や出版社の原稿依頼には、これからも積極的に応えていくし、ブログも更新していくことだろう。

しかし、そうした顕在化しやすい仕事だけではなく、静かな仕事もひそかに続けていきたいと思う。


思えば、私にとって『漂流物』は「静かな仕事」だった。

鎌倉の海岸を歩き、打ち寄せられた漂流物を、ひたすら撮影する。

当時は、デジタルカメラを使っていなかったので、ライカで写した写真は紙焼きし、それを書斎で眺めているうちに、言葉を添えるようになった。

一冊にまとめることも考えていなかったし、発表する予定もなかったのに、私は、その仕事に熱中していたのを思い出す。


そんなふうに、静かな仕事にも打ち込みたいと思うのだ。



今年は、詩に関していえば、吉増剛造の年だったといえるだろう。

竹橋の国立近代美術館で開催された「声ノマ 全身詩人、吉増剛造」展と、それに合わせて刊行された『我が詩的自伝』(講談社現代新書)、『怪物君』(みすず書房)を始めとする9冊もの新刊は、やはり、圧倒的だった。

竹橋の展示では、東日本大震災以降、吉増さんが書き(描き?)続けた600枚を超える「詩の傍らで」が、目を引いたが、同時に、40年にわたって書き続けられた日記や、声のメモとしての1000本を超えるカセットテープに圧倒された人も少なくないだろう。

それは、日常を非常時として生き抜いてきた詩人の航跡であり、その波紋は、いまだに広がり続けている。

そして、吉増さんが続けてこられたのも、まさに「静かな仕事」だったのではないだろうか。
posted by 城戸朱理 at 08:17| 仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする