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城戸朱理のブログ

2017年03月09日

インディペンデント映画



久しぶりにジム・ジュームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984)を見た。

これといって何も起こらないのだが、コミカルでありながら空虚さを抱えた若者たちの群像は、今見ても素晴らしい。

20代のとき、初めて見たときの興奮が甦るかのようだった。


この作品は、ヴィム・ヴェンダースがハリウッド進出に失敗し、余った1時間分ほどの35mmフィルムをジャームッシュにプレゼントしたところから始まった。

ヴェンダースとしては、15分ほどの短編が撮れると思ったらしいが、ジャームッシュは入念なリハーサルを重ねてフィルムの無駄を廃し、第一作目となる長編を作り上げた。
(この前に「パーマネント・バケーション」が撮られているが、これは卒業制作である)


そして、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」は、ロカルノ国際映画祭で金豹賞(グランプリ)、カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール(新人監督賞)、さらに全米映画批評家協会賞を受賞し、世界のシネアストの注目を集めることになる。


ジャームッシュは、今年のカンヌにも「パターソン」を出品しているが、「ブロークン・フラワーズ」(2005)で、カンヌの審査員特別グランプリを受賞しているので、残すは、最高賞のパルム・ドールのみとなる。


そんなことはともかく、ジャームッシュの凄さは、アメリカに生まれながら、ハリウッドとは無縁のインディペンデント映画を撮り続けているところだろう。

映画制作には、とにかくお金がかかる。

これといったスターが出演しない一般的なハリウッド映画でも、平均予算は20億円を超えると聞いたことがあるが、ジャームッシュは予算に縛られず、映画を作る道を見いだしたことになるわけで、これは創作の自由を保証するものとなるだろう。


インディペンデント映画の先駆と言えば、ジョン・カサヴェテスだが、カサヴェテスのことを考えると、私はいつも愉快な気分になる。

監督第一作は、「フェイシズ」(1968)。

なんと、自宅を抵当に入れて資金を作り、その自宅で撮影したという無茶ぶりが素晴らしい。


「フェイシズ」は大いに話題を呼び、インディペンデント映画というジャンルの確立に寄与したが、その後、カサヴェテスは、「グロリア」(1980)で、ベネツィア国際映画祭の金獅子賞、「ラヴ・ストリームス」(1984)で、ベルリン国際映画祭の金熊賞、国際批評家連盟賞を受賞している。

こう書くと華々しい経歴のようだが、彼は、妻のジーナ・ローランズとともに、ハリウッドの俳優業で得たギャラを映画制作に投じており、映画制作の資金作りのために俳優をしていたふしさえある。

ふつう、カサヴェテスやジーナ・ローランズほどの役者なら、ハリウッドのスターになったところで満足しそうなものだが、そうでなかったところが、痛快である。

誰かに頼まれたのではなく、自分が撮りたいものを作ろうとしたら、世界的な巨匠になるまで待つか、インディペンデントしかない。


映像のデジタル化によって、映画制作は敷居が低くなった。

今や、あの「シン・ゴジラ」も一部がそうだったように、iPhoneでも映画が撮れる時代なのだ。

そのせいもあって、インディペンデント映画の制作本数は増えている。

だからと言って、カサヴェベテスやジャームッシュのような才能が、次々に現れてくるわけではないにしろ、新しい力の胎動を感じるようにはなったのも事実である。


詩もまた、あらかたがインディペンデントなわけだから、手にした自由を振り切るほどの詩を書くことを目指すしかない。
posted by 城戸朱理 at 10:40| エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする