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城戸朱理のブログ

2017年09月01日

レコード、カセット、写ルンです

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あらゆるものがデジタル化され、情報として流通するようになった時代に奇妙なことが起こっている。


カメラ付きが当たり前のスマートフォンとデジタルカメラの普及で、今や誰でも気楽に写真を撮れる時代だが、カメラ女子と呼ばれる写真好きの女性を中心に、ひそかに「写ルンです」が人気を呼び、雑誌で特集まで組まれた。

若手写真家の奥山由之さんも「写ルンです」を愛用していたりする。


「写ルンです」は、富士フィルムが、1986年に発売した、レンズ付きフィルム。

一般には、使い捨てカメラと思われているが、正しくは「レンズ付きフィルム」である。

絞りもシャッタースピードを気にせず、デジカメと同じように気楽に撮影できるが、現像して紙焼きするまで、どんな写真が撮れたかは分からない。

それだけ、手間がかかるわけだが、若者にはコピーもレタッチも出来ない一回性と、デジカメとは違うフィルムの質感が、逆に新鮮に映るらしく、思いがけないアナログ回帰が起こっている。

「写ルンです」のみならず、やはり富士フィルムのインスタントカメラ、チェキの人気も再燃しているが、同じ理由だろう。

あのライカが、インスタントカメラ「ゾフォート」を発売したのも、そうした流れを汲んだものなのだろうか。

私もライカ「ゾフォート」を発売直後に購入したが、インスタントカメラは、一眼レフとは、また違う楽しさがある。



さらに、今や、CDよりも配信が中心になった音楽業界でも、レコードとカセットが売れるという不思議な現象が起こっている。

20世紀の遺物と思われていたカセットが復権する日がくるとは思ってもみなかったが、ジャスティン・ビーバーがアルバム「パーパス」をリリースするとき、カセット版も出したのがきっかけとなって、音楽ファンの間で人気が再燃したらしい。


また、レコードの売上げも、飛躍的に増加しているが、こちらは分からないでもない。

CDは、人間の可聴音域以外の低音域と高音域をカットしているが、レコードには、人間の耳には聞こえない音まで録音されている。

そのため、音に広がりと深みがあり、コアな音楽ファンは、CDの時代になっても「ヴァイナル」と呼ばれたレコードを探して歩き回ったものだった。


その傾向が、最近、世界的に加速し、アメリカでは、アナログ・レコードが、前年比49%アップ、800万枚ものセールスを記録したという。

イギリスではレコードの売上げがデジタルを上回ったほどで、日本でも、2009年に約10万枚と最低を記録したレコードは、2015年には約66万枚と売上げが増加している。


こうした一連の動きは、たんなるアナログ回帰なのではなく、むしろ、身体性に関わるものなのかも知れない。

そして、これは書物はもちろん、実は詩にも関わる問題なのではないだろうか。
posted by 城戸朱理 at 13:39| エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする