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城戸朱理のブログ

2017年09月09日

土方巽の漬物と大野一雄の鮭



1985年に、私が第一詩集『召喚』を刊行して間もないころ、ひと抱えもある宅急便が届いた。

差出人を確認して、愕然としたのを今でも覚えている。


「アスベスト館 土方巽」


なんと、舞踏の創始者からの宅急便ではないか!


慌てて開けてみると、出てきたのは木桶で、中身は金沢の鰤と蕪の漬物だった。

手紙も何も添えられておらず、届いたのは漬物だけ。

訳も分からぬまま、いつか、土方さんにお会いする日が来たときにお尋ねしようと思ったのたが、翌年、1月21日に、土方巽は世を去った。

あの漬物は何だったのだろうか?


それから、17年後。

あれは、2002年のことだったと思う。

ある日、大きな宅急便の包みが届いた。

差出人は、大野一雄先生である。

大野先生が何を送って下さったのだろうと、急いで包みを開けてみたら、なんと大振りな時鮭が出てきた。

やはり、手紙などは添えられていない。

鮭が一尾。

時鮭がまるごと一尾。

時鮭(ときしらず)は、夏に水揚げされる白鮭で、産卵期ではないため、身に脂が乗っている。

出刃包丁でさばき、絶品の時鮭をいただいたのだが、こちらは翌日、大野先生からお電話があって、先生から問い合わせがあった詩篇が収録されている詩集を私が調べてお伝えしたことへのお礼であることが分かった。


しかし、この二度にわたる突然の贈り物のおかげで、私のなかでは舞踏家のイメージが、鰤と蕪の漬物や時鮭と繋がってしまったのも事実である。

突然、送られてくる発酵食品やまるごとの魚。

それは、土方巽の「舞踏とは命がけで突っ立った死体である」という言葉と響き合うような気がしないでもない。
posted by 城戸朱理 at 15:59| エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする