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城戸朱理のブログ

2019年10月31日

鎌倉ペンクラブ、秋の公開講座に備えて、その2



ラグビーW杯の観戦はスポーツバーかパブに行ってビール片手に、自国を応援する外人と一緒に騒いでいるのだが、それ以外は自宅にこもって仕事をする日が続いている。

ところが、27日の昼には沖縄の詩人、与那覇幹夫さんから、夕方には萩原朔太郎賞の授賞式を終えたばかりの和合亮一くんから電話があった。


「今、前橋駅なんですけど。
祝電、ありがとうございますぅ」と和合くん。


授賞式が終わって、すぐに福島に帰らなければならないとのこと。とは言え、何も駅から電話をくれなくてもいいのに。

そして、翌々日には、吉増剛造さんから、朔太郎賞授賞式の様子を伝える葉書が届いた。

毎日、散歩には出かけるので、電話や葉書だけが外の息吹きを伝えてくれるわけではないが、電話であれ葉書であれ、何らかの言葉が届けられると新鮮な気分になる。


幸い11月31日には公開講座のためのレジュメを書きあげることができた。

レジュメは、新元号「令和」の出典についてや、家持の年譜と作品で構成したのだが、書き終えたデータをバンビことパンクな彼女がPCで整えて原稿にしてくれた。


家持の祖父は、大納言・大伴安麻呂、父は大納言・大伴旅人。

平城京の佐保に邸を構えたため、佐保大納言家とも呼ばれ、弟に早逝した書持(ふみもち)がいる。


ところがバンビは、「やかもちの弟さんはかきもちっていうんだね!」

違う!

書持は「ふみもち」と読むんだ!

「かきもちのほうが美味しそうだよ!
さくっと、もちっと、おいしいやかもちにかきもち!」
・・・・・・

かくして、万葉の大歌人は、お餅か何かの仲間にされてしまったのである。

パンクだから仕方がないが、いいのだろうか、これで?
posted by 城戸朱理 at 19:51| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鎌倉ペンクラブ、秋の公開講座に備えて

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11月に入ると、鎌倉ペンクラブ・早見芸術学園共催の秋の公開講座「現代作家が読み解く『万葉集』」が開設される。

私は第一回目、11月2日の担当で、演題は「乱世の言霊〜大伴家持を中心に」。


鎌倉ペンクラブの講座では、これまで『平家物語』と島崎藤村を受け持ったが、今回の準備がいちばん大変だったかも知れない。

島崎藤村のときも、いざ話し始めたら『夜明け前』の前までで時間切れとなり、翌春に「『夜明け前』から」を追加で講演することになったが、『万葉集』、さらに大伴家持となると90分で話せるはずがない。


10月23日には鎌倉市役所のメディアセンターで記者会見を開き、今回の講師の織田百合子さん(作家)、松平盟子さん(歌人)に私が「毎日新聞」や鎌倉ケーブルテレビの取材を受けたが、その後、ラグビー・ワールドカップに気を取られながらも、『万葉集』を始めとする数十冊の資料を積み上げて、当日、会場で配るレジュメを作っていた。


大伴氏は物部氏とともに武門の家柄で、家持も最終官位は従三位中納言、鎮守府将軍、征東将軍。

歌人、大伴家持を思うと意外な感じもするが、中西進によると、上代においては、戦は言葉の戦いでもあり、征服することを「言向け」といったそうだ。


もうひとつ、家持の謎がある。

『万葉集』は全20巻、約4500首を収めるが、そのうち家持の作品は474首。

ところが、759年(天平宝字3年)を最後に、家持の作歌は途絶えている。

このとき、家持は42歳で、薨去したのが67歳と推定されるので、その後、26年は生きていたことになる。

この空白の時期に家持は和歌をいっさい詠まなかったのだろうか。



あれこれ考えながら、レジュメを書いていたら、バンビことパンクな彼女がやって来た。


「大伴家持のレジュメは、分かりやすく書いてあげてね!」

それは注意しているつもりだが。

「さくっと、もちっと、おいしいやかもち!」
!!!!!!

「んふ。やかもちって、なんだか美味しそうだね!」
・・・・・・


家持は、お菓子でもお餅でもない。

パンクだから仕方がないが、いいのだろうか、これで?
posted by 城戸朱理 at 15:30| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

馬具メーカーの万年筆ケース

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10月1日から、消費税が10%になった。

増税前の駆け込み消費も低迷したままで、日本経済の体力がなくなったことをあらわにした感がある。

今や、日本の国民ひとり当りのGDPは約3万9千ドルで、香港やニュージーランド、アラブ首長国連合にも抜かれ、世界で26位。

厚生労働省の発表によると、今年に入ってから、すべての月で、実質賃金指数も下がり続けている。

それだけに、今回の増税は消費者に大きな打撃となった。

日本の非正規労働者は就労人口の4割に達し、国民の7人に1人が貧困に苦しんでいる。

日本は貧しくなったし、これから、さらに貧しくなっていくのだろう。



わが家でも、増税前に何か買い足すべきものはないか考えた。


「ないよ〜。必要なものはみんなあるよ。
増税したら、もう何も買わないよ〜」とバンビことパンクな彼女。


たしかに去年あたりから、10月の消費税増税をにらんで、買い替えが必要なものは買うようにしていたので思いつくものはない。



写真のペンケースもそのひとつ。

皇室にも納入している日本唯一の馬具メーカー、ソメスがパイロットとコラボした万年筆用のペンケースである。

ソメスの革製デスクマットも10年以上、愛用しているが、ペンケースも頑健な作りで、万年筆を間違いなく保護してくれる。

セットしてあるのは、モンブランのマイスターシュテュック146と149、デルタのエボナイト軸のローマ・インペリアーレとドルチェ・ビータ・オーロ、それにペリカンのスーベレーン400と、私の主力の万年筆。

ペリカンのかわりにパーカーの「ビッグレッド」こと赤のデュオフォールドを持ち歩くこともある。

田村隆一さんが晩年、使っていたのは黒のデュオフォールドだった。


デルタのドルチェ・ビータは藤沢周氏も持っていると言っていたが、イタリアを代表する万年筆メーカーだったデルタは、2018年2月に廃業してしまった。

美しい万年筆を作る会社だっただけに残念だ。


いちばん古いモンブランの149は、もう30年使っているが、このペンケースは何年、使うことになるのだろうか。
posted by 城戸朱理 at 09:15| 骨董・工芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月30日

今道子さんと空花で、その2

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赤むつの煮物も滋味深く、鬼おろしでおろした大根がよく合う。


茸を添えた牛ステーキは赤味噌で。

口のなかで溶けるような和牛だったが、牛肉は実は日本酒の当てになる。


土鍋で炊き上げるご飯は、鯛飯かイクラを選ぶようになっていたが、今道子さんのために空花名物、イクラ飯を。

私は三度目だが、何度いただいてもいいものだ。


お菓子は、ほうじ茶のアイスクリームに栗の渋皮煮と香りとかすかな渋みが呼び合うような手の込んだ逸品だった。



日本のみならず、海外の美術館にも作品が収蔵されている今道子さんとは20代のころからの付き合いだが、最近はご一緒する機会が増え、あれこれお話できるのが嬉しい。
posted by 城戸朱理 at 14:11| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

今道子さんと空花で、その1

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写真家の今道子さんにフレンチとお寿司をご馳走になってしまったので、今度は私がお招きすることにした。

お互いにスケジュールをすりあわせて、バンビことパンクな彼女が、10月9日に長谷の空花を予約を入れる。

築90年の民家をリノベーションしたお店の前で、開店時間の午後6時に待ち合わせたのだが、今さんとバンビは江ノ電の同じ車両に乗り合わせたそうで、一緒に到着。


空花の献立は月がわりだから、澁澤龍子さん、平井倫行さんと行ったときとは違う料理が出るのを期待したのだが、今回も素晴らしかった。


先付けは丸ごとの柿をくりぬき、柿と皮目を軽く焙ったカマスに春菊が自家製の胡麻だれで和えられた一品。

お造りは、太刀魚、カンパチにタコ、焙った鰹で、当然、日本酒を頼む。

ぐい呑みは、北大路魯山人の桝盃を持参したが、空花のオーナーシェフ、脇元かな子さんもご自宅は骨董の桐箱が積み上げられ、足の踏み場がないそうだ。

お店で使われている器は、すべてシェフの私物なのだとか。


揚げ物は平貝だが、天ぷらではなく、パン粉を使ったフライで、かき揚げにしたヒモも添えられている。


茶碗蒸しはワタリガニとショウガの餡かけで、実に風味がよい。
posted by 城戸朱理 at 14:09| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月29日

「みなみのかぜ」第七号

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2016年4月。

初めて気象庁震度階級で最大となる震度7が2回、さらに6強が2回、6弱が3回と激しい地震が発生した熊本地震。

台風、豪雨、洪水とさまざまな自然災害が多発し、被災地が拡大していくなかで、熊本地震の記憶も風化しつつある。

だが、熊本地震をきっかけに刊行が始まった「みなみのかぜ」を開くと、その記憶がよみがえってくるかのようだ。


参加同人は、菊石朋、清水らくは、津軽清美、平川綾真智、広瀬大志、寄稿が藤崎正二。

全員が熊本出身や在住というわけではないし、直接、被災に触れた作品が並ぶわけでもない。


だが津軽清美「眠らないのか眠れないのか、狂四郎」、将棋の棋譜に詩を織り込んでいく平川綾真智の「藤井システムの排卵」のアナーキーぶりはどうだろう。

まるで、現代の萩原恭次郎『死刑宣告』のようだ。


広瀬大志は、相変わらず禍々しく、輪廻をテーマとする清水らくは「Nichtsein」も異想の展開が際立つ。

詩の〈くらい穴〉に入って書いたという山崎正二の散文詩も異界を覗くようだし、参加者全員の危機と向かい合う姿勢が、熊本地震を呼び起こすのかも知れない。

今日、もっとも充実した詩誌のひとつだと思う。


ここでは、巻頭の菊石朋「海辺の植物園」の冒頭を紹介しておこう。



他人のことばのような砂を
足の裏でつかみ
水のいろへと消えゆくまで

あの漣は、
海洋生物の空腹を忘れ
とおいところから
やってくる

陸では今も
浅瀬の波に打たれ
立っている
枯れた肉食獣たち
誤解された牙はどこまでも伸びて
どこにも向かわず
みんなぽつりと立ち尽くす
黄金に騒めき乾いていく空は
語ることばをもたないから
わたしたちに夢を与えなかった
posted by 城戸朱理 at 11:22| 詩誌・詩集評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「みらいらん」第4号(2019 夏号)で吉増剛造さんと対談

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「みらいらん」(洪水企画)の田村隆一特集のために、鎌倉文学館の一室を借りて、吉増剛造さんと対談したのは、5月16日のこと。

文学館の薔薇園が見事だった。


田村さんは、まだ20代の私が聞き手をつとめた1988年の「現代詩手帖」のインタビューで、自らの最後の詩集は『1999』と語られたが、その言葉通り、詩集『1999』を刊行して、21世紀を見ることなく、1998年に亡くなられた。

悦子夫人が建てた妙本寺の田村さんのお墓の側面にも「1999」という数字が刻まれている。


去年は田村隆一没後20年だったのだが、詩壇では、これといった動きがなく、残念に思っていたところ、洪水企画の池田康さんが田村隆一特集を企画してくれたのである。


田村さんに仲人をしてもらった吉増剛造さんと、田村さんが晩年を過ごした鎌倉で対談するのは感慨深いものがある。

対談は、題して「彗星のように回帰する日」。


特集執筆陣は、新倉俊一、八木忠栄、山内功一郎、田野倉康一、和合亮一、中原秀雪、石田瑞穂、神泉薫、広瀬大志。



充実した田村隆一特集が実現したことを喜びたい。
posted by 城戸朱理 at 10:31| 仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

長谷の空花で会食、その2

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前もってお願いしておいた龍子さんの好物、牛ほほ肉の赤ワイン煮は、フレンチの手法だが、かすかに出汁の味が聞こえる。

赤ワインを使いながらも和食になっているところが面白い。


土鍋で炊き上げるご飯は、鮎飯も選べるのだが、平井倫行さんは空花が初めてなので、名物のイクラご飯を頼んだ。

お米は長野の風さやか。

表面を覆ったイクラに歓声があがる。

スタッフがよそってくれるのだが、空花はスタッフも全員、女性である。


お菓子は、コーヒー水ようかんとプラムのシャーベット。

コーヒーと小豆餡の取り合わせには驚いたが、創意と工夫が楽しい。


空花は日本酒の品揃えも充実しているのが、私にはありがたい。
posted by 城戸朱理 at 10:05| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

長谷の空花で会食、その1

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アート・ドキュメンタリー「Edge」の記念すべき100本目となる澁澤龍彦篇の澁澤邸での最後の撮影が9月14日にあった。

この日は異端美学の研究者、平井倫行さんが澁澤邸を訪ね、龍子さんにお話をうかがう場面などを撮影したのだが、
長時間の撮影にお付き合いいただいた龍子さんと平井さんの労をねぎらうべく、長谷寺に近い空花を予約した。


空花が、開店したのは2016年9月。

ミシュラン三ツ星の「元麻布かんだ」で修行し、「アコメヤ厨房」の料理長をつとめた脇元かな子さんのお店で、
鎌倉で和食ならここと思っていたのだが、龍子さんもお気に入りの店、しかも和食には珍しい牛ほほ肉の赤ワイン煮が、とても美味しかったとおっしゃっていたからである。



まずはビールで乾杯して、先付けはワタリガニと鎌倉野菜に出汁のジュレ(写真なし)。

お造りは、三崎の太刀魚に黒むつ、宮城の鰹に佐島のタコと、日本酒を頼むしかないという取り合わせ。

お造りは、お醤油か濃厚なたまり醤油を好みで。


お椀は、脂の乗ったアイナメとスダチがいい調和を見せ、出汁がしみじみと沁みる。

揚げ物は、大胆に鎌倉産サザエ。

塩に貝殻を乗せ、岩海苔をあしらって磯の景色を再現するかのよう。

ひとりにサザエ2個分はあるのではないかという量だが、このサザエ、どういう下処理をしているのか、とても柔らかい。


箸休めの酢の物は、北寄貝と金沢の金時草。

焼き物は、ゴボウチップをあしらったサワラで、なんと味噌幽庵焼き。

幽庵焼きは、醤油と味醂に漬け込むが、これは味噌と味醂を使った一品で、味わい深い。
posted by 城戸朱理 at 10:02| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

しまい洗いと衣替え

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10月も後半になって、ようやく衣替えをすることになった。

洗濯済みの衣類も、黄ばみや虫喰いを防ぐために、クリーニングに出すか、しまい洗いをしてから収納することになる。

台風と水害で、なんとも落ち着かない日々が続くが、そんななかでも日常が続いていくことが不思議に思えるのは、私だけだろうか。



今年の夏も過酷な暑さだった。

熱中症による救急搬送や死亡のニュースが絶えなかったが、私は毎日、散歩に出かけて汗をかくことで、なんとかやり過ごすことができた。


私の場合、最高気温25℃まではスーツを、それ以上になったらノータイでジャケットを着用するが、服に汗を吸わせるためのような暑さでは、何を着ていたところで暑い。


それでも、仕事によってはスーツやジャケットが必要になる場合があるのが、なんとも悩ましい。



今夏、愛用したジャケットがクリーニングから戻ってきたので収納したのだが、涼感があるブルー系のものばかり着用していた。


いちばん涼しかったのは、ARMANI COLLEZIONIのシルク・ウール混紡のシアサッカーのジャケット。

シアサッカーは生地に凹凸があるため、肌に触れる面積が少ない。


ブルー系のチェックのジャケットもARMANI COLLEZIONIだが、これもシルク・ウールでシアサッカー・ジャケットよりもウールの比率が高い。

シルクの比率が高いほうが、少しは涼しい気がする。

どうしてもスーツを着なければならないときは、GIORGIO ARMANIのリネンとコットンのスーツ2着に頼りっぱなしだったが、リネンやコットンよりも薄手のウールか、シルク・ウール混紡のほうが、実は涼しいように思う。

シアサッカーのジャケットは3年前、チェックのジャケットは2年前に求めたものだが、ARMANI COLLEZIONIは去年、EMPORIO ARMANIに統合されたので、今はない。



最後のジャケットは、5月にハワイに行ったときに購入した。

ニューヨークの高級デパート、Saks Fifth Avenueのオリジナルで、生地はイタリアのロロピアーナ社のウール・リネン・シルク混紡。

縫製もイタリアだが、ファクトリーはベルベストあたりだろうか。

夏物のジャケットを5着処分したあとだったので、目についたのだが、こんな調子で、持ち物を減らしていきたいものだ。


まだコートや厚手のセーターは出していないが、衣替えを終えて、今年も残すところ、あと二ヶ月ほどなのに呆然としている。
posted by 城戸朱理 at 10:00| エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月28日

素敵なおもてなし???

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西部邁先生が自裁されてから1年以上が過ぎた。

今の日本をありさまを、西部先生ならどう思うだろうか。

ときどき、バンビことパンクな彼女と西部先生の思い出を語り合うことがあるのだが、西部先生を囲むパーティーでバンビが大活躍したことがあった。


あれは5年前、2014年4月28日のこと。


奥さまを見送られた西部先生を励ます会がアルカディア市ヶ谷で催されたのだが、西部先生の会だけに、バンビは最年少、「みなさんをおもてなししなくっちゃ!」と、はりきっていたのである。


いざパーティーが始まって、乾杯が終わっても、私たちのテーブルの壁際で立ったまま、飲み物さえ手にしていない男性がいた。


それに気づいたバンビは「何かお注ぎしましょうか?」

「結構です」

「ビールはいかがですか?」ともうひと押しするバンビ。

「結構です」

さらに「じゃあ烏龍茶でも」とバンビは、これでもかとダメ押しする。

「勤務中ですから」


そこで初めて、バンビは男性の耳のインカムに気がついた。

そう、その男性はパーティーに出席していた参議院議長を護衛するSPだったのである!

なんとバンビは、おもてなし精神を発揮して、SPにお酒やら飲み物やらをせっせと勧めていたわけで、断られるのも当たり前。

おもてなしは大事だが、これでは、「おもてなし」ではなく仕事の「お邪魔」である。


パンクだから仕方がないが、いいのだろうか、これで?
posted by 城戸朱理 at 09:13| エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月27日

終末までの時間



宮城県石巻市にロケに行った井上春生監督が、そのまま北上して岩手県の沿岸部の被災情況を連絡してくれた。

東日本大震災の大津波で三陸海岸は甚大な被害を受けたが、NHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」のモデルになった三陸鉄道は、先月の台風15号の影響で再び不通になっている区間があるそうだ。


台風15号は千葉県に大変な被害をもたらしたが、今月の台風19号が追い討ちをかけ、さらには台風21号の影響による10月25日の大雨でますます被害が拡大している。

度重なる水害で、すでに死者・行方不明者は100名を超えてしまった。

この国の治水事業が至らなかったのか、それとも台風と豪雨が強力すぎたのか、昨年、大阪に上陸した台風21号と同じように、信じがたい映像がSNSに次々とアップされていく。


今年も去年と同じように生命にかかわるほどの酷暑だったが、台風も年々、勢力を増している。

これから、毎年、夏は酷暑にあえぎ、秋には強大な台風が列島を襲うとしたら、被災地は、さらに増え続けることになる。

まるで終末の眺めのようだ。



2018年に亡くなった理論物理学者のスティーヴン・ホーキング博士は、その晩年、人類の絶滅までの時間をわずか100年に修正した。

そして、アメリカの科学者たちが、核戦争や環境破壊などの脅威を考慮して人類滅亡までの時間を象徴的に示す世界終末時計は、今年、過去最悪の「2分前」のまま変わらなかった。

私たちに残された時間は、あとどれくらいなのだろうか。
posted by 城戸朱理 at 11:49| エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月26日

もう靴は買わない〜JOHN LOBBのフルブローグとスニーカー

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5月25日から一週間ほど、仕事でハワイに行っていた。

ホテルは、ダイアモンドヘッドを望むことができるパークショア・ワイキキ。

取材をして現地で原稿を書きあげなければならなかったので、泳ぐ余裕さえなかったが、それでも景色を眺めているだけで、晴れやかな気分になる。


27日の日中は余裕があったので、ロイヤル・ハワイアンセンターのフードコートで昼食を済ませ、バンビことパンクな彼女にそそのかされて、高級紳士靴店として名高いレザーソウルを覗いてみることにした。

レザーソウルは、オールデンの正規代理店だから、コードバンの靴目当ての観光客でいつも賑わっている。

オールデンのコードバンの靴なら、すでに5足ほど持っているので、私は見るだけのつもりだった。

ところがーーー

なんと英国靴の最高峰として知られる「キング・オブ・シューズ」ジョン・ロブのモデルがいくつか、セールになっているではないか。

しかも、私のサイズがある。

試しに履いてみたのは、外羽根のフルブローグ、HAYLE。

黒のミュージアムカーフで、ラストは8695。

レザーソールではなく、ラバーのオクトーバーソールが搭載されており、メンテナンスは革底より手軽である。


「せっかくだから買ったほうがいいよ〜。
これを履いて鎌倉をお散歩したらいいんじゃないかな」


日本だと25万ほどする靴だが、バンビにそそのかされて気持ちが傾く。

そこにスタッフが「こちらもセールになっています。お客さまのサイズですよ」とスニーカーまで持ってきた。

スエードでダブルモンクストラップのデザイン、これはたしか昨年発表されたHOLMEというモデル。

ダブルモンクストラップは、ジョン・ロブが稀代の洒落者、英国王エドワード8世(後のウィンザー公)のためにデザイン、製作したもので、現在でもウィリアムIIとして作られており、私も愛用している。

それをスニーカーに落とし込んだあたりは、さすがジョン・ロブだが、またもやバンビがーー


「このスニーカーを履いてお散歩したら、きっと気分がいいよ!」


そんなに散歩ばかりしているわけにはいかないが、二足購入しても日本で一足を買うより安いくらいだったので、結局、買ってしまったのだった。

もう靴は買わないと言いながら、旅先だと、こういう買い物をしてしまうことがある。

困ったことである。
posted by 城戸朱理 at 02:00| エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月25日

パリで開催されるヴィジュアル・ポエトリー展に出品準備中



パリのGalerie SATELLITEで、11月16日から12月7日まで開催されるPoesie visuelle japonaise「日本のヴィジュアル・ポエトリー」展に参加することになった。

この展覧会には、日本のコンクリート・ポエトリーの創始者、新国誠一やヴィジュアル・ポエトリーの先駆者、北園克衛、伝説のヴィジュアル・ポエット、高橋昭八郎、藤冨保男といった先人の作品が展示されるとともに、
河津聖恵、ヤリタミサコ、大園由美子、北爪満喜、そして石田瑞穂、望月遊馬といった現代詩人の新作が出展されることになる。


ヴィジュアル・ポエトリーは、フルクサスやネオ・ダダと連動する20世紀後半の前衛運動だが、欧米ではニュー・クラシックとして評価が定まっている。

言語が持つ文字の形象性を再考するためにも、ヴィジュアル・ポエトリーへの考察は続けられるべきだろう。


父親から譲られた一眼レフカメラに、50年前、小学生だった私が入れたフィルムを見つけたのだが、
バンビことパンクな彼女が、わが国の音楽写真の第一人者、菅野秀夫先生に相談したところ、
菅野先生がプロ・ラボで現像して下さり、未使用のフィルムから50年間の光が浮かび上がることになった。

このフィルムを生かして、ヴィジュアル・ポエトリーの作品を作ってみようと考えている。
posted by 城戸朱理 at 15:28| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「甕星」vol5、特集「おそれ」にインタビュー掲載

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「甕星(みかぼし)」を編集・発行する異端美学の研究家、平井倫行氏とは、詩人の菊井崇史さんを介して出会った。

平井さんは、博士論文執筆のため今は休載されているが「図書新聞」に「刺青の栞」を連載しており、松田修『刺青・性・死 逆光の日本美』(講談社学術文庫)にも素晴らしい解説を寄せられている。


「甕星」にも「松田修資料整理報告」が掲載されているが、寄稿者でもある菊井さんが全面的に編集をサポートされているそうだ。

甕星は『日本書紀』に現れる星の悪神、天津甕星から取られた誌名だが、その名にふさわしく、今号の特集は「おそれ」。

平井さんから「恐怖」について語ってほしいという依頼を受け、2月26日に北鎌倉の侘助でインタビューを受けたのだが、それが「文藝×怪異『影談』」というタイトルで掲載されている。


「『遠野物語』オシラサマと『聊斎志異』(りょうさいしい)を手掛かりとして」という副題がつけられているが、
私があらかじめ『遠野物語』と『聊斎志異』を取り上げることを平井さんにお伝えして、インタビューの場に臨んだ。

清時代の蒲松齢が怪異談四百余話を集成した『聊斎志異』は、私の15歳のときからの愛読書だが、まさか、こんなふうに語る日が来るとは思わなかった。


ラヴクラフトへのオマージュ、泉井夏風「円匙を手に灰を掘る」、吉野東人「デイドリーム・ワンダーランド」、山田JETギャラガー「悪夢十夜」、窪田由美「OSORE」など不吉さがみなぎる誌面。

そこに鈴木基弘『「居酒屋」小考』といった論考も掲載されているのが面白い。


「甕星」は次号で舞踏特集を企画しており、実現が楽しみだ。
posted by 城戸朱理 at 11:43| 仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「白亜BIBLION」vol.70にインタビュー掲載

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私の母校である岩手県立盛岡第一高等学校図書館の機関誌「白亜BIBLION」のインタビューを受けたのは、今年の初め、1月13日のこと。

年一回の発行だから、70年もの間、刊行されてきたことになるが、そう思うと凄い。


卒業生へのインタビュー企画は15回目になるようだが、6年前の9回目に続いて、私は2回目の登場となる。


当日は佐藤牧子先生の引率で、図書委員の吉田智哉くんと四日市光太郎くんが鎌倉まで来てくれた。

おふたりともサマセット・モームやドストエフスキーを読んでいるという読書好きだが、志望する大学は理系。

優秀な後輩を前に、私が語れることが本当にあるのか戸惑ったが、鎌倉文学館の一室を借りてインタビューを受けた。


盛岡一高は、石川啄木、宮澤賢治ふたりの詩人が先輩にいるので、私が詩について語るのはおこがましいが、吉田くん、四日市くんがあらかじめ質問を用意して、インタビューは進んだ。

なかには「詩作という営みを一言で表現するとしたら?」といった難問もあって、私自身が自分の根源を見つめ直す機会になったことに感謝したい。


吉田くんは、鎌倉でも鎌倉文学館が特に印象深かったと感想を書かれ、四日市くんは、私へのインタビューの間に「本当にこういう人が実在するんだなあ」という「謎めいた感動」をしばしば覚えたのだとか。

おふたりにとって、そして在校生のみなさんにとって、何であれ得るものがあるとしたら幸いである。


このインタビューには後日談があって、岩手日報学芸部長在職中に急逝された一戸彦太郎さんの陽子夫人からメールをいただいた。

陽子さんはピアノを教えておられるのだが、なんと四日市くんは陽子さんに師事してピアノを弾かれていて、学祭でショパンの「革命」を弾くべく猛練習中なのだという。

思いがけないご縁に、彦太郎さんのことを偲ぶことになった。
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2019年10月24日

鮨處もり山で、その3

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龍子さんが、もり山で必ず食べるというネギトロは、大トロのサクを目の前で叩いてくれる。

「大トロは食べないけれど、ネギトロだけは別」と龍子さん。

ネギが大トロの脂っこさをなだめてくれるからだろう。

機会があったら、澁澤龍彦さんの好みの寿司は何だったのか、龍子さんに聞いてみよう。


マグロの赤身は漬けで。


ここで松茸の土瓶蒸しが出たものだから、いよいよ酒が進む。


煮上がりの穴子を塩で握ってもらい、最後は脂の乗ったノドグロ。

皮目を軽く炙ってあるので香ばしい。


またもや今道子さんにご馳走になってしまったが、いいのだろうか。

今度は私が、お礼の席を設けなければ。
posted by 城戸朱理 at 14:38| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鮨處もり山で、その2

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柔らかく炊いたタコは、佐島産。

相模湾の地タコは、明石のタコに劣らず、味わい深い。

続いて、甘みが素晴らしいアオリイカ。


龍子さんは貝もお好きだが、アワビは握りではなく、バター焼きにしてもらうのだとか。

この日は赤貝を握ってもらった。


箸休めの漬け物は、山芋と水茄子。

水茄子は夏の間、毎日のようにわが家の食卓に上がる私の好物である。


蒸し海老は、大振りの車海老で、絶品だった。
posted by 城戸朱理 at 14:34| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鮨處もり山で、その1

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写真家の今道子さんから、四谷シモンさんのポートレートのプリントが終わったので、お礼として澁澤龍子さんをお招きする席に、バンビことパンクな彼女と一緒に招待していただいた。

バンビは撮影のお手伝いをさせてもらったが、私は何もしていないのにいいのだろうか。


お店は、龍子さん行きつけの鮨處もり山。

藤沢周氏や私もよく行く店だが、私は久しぶりだ。


8月15日のことだが、翌日から始まる番組ロケに立ち会うために、東京のホテルに連泊することになっていたのだが、その前に大船のもり山に行くことになった。

もり山さんでは、私はお好みで握ってもらうのがもっぱらだが、龍子さんは、いつもおまかせなのだとか。

私は、もり山さんで、おまかせをいただくのは初めてである。


ビールで乾杯したが、バンビは今さんから四谷シモンさんと龍子さんが並んで立っているオリジナルプリントをプレゼントされて、興奮している。



おまかせは中トロから。

そういえば、もり山さんが以前「おまかせはトロから握ります」と言っていたっけ。

龍子さんは大トロは食べないそうだから、中トロになったのだろう。

続けて、夏の風物詩、新子。

寿司ネタで唯一「香りもの」と呼ばれる新子は、小肌の当歳魚で、鼻に抜ける香りは、唯一無二。

去年は新子を食べることができなかったが、しみじみと美味い。

龍子さんは光物は食べないが、新子だけは別なのだそうだ。


叩いた鯵とネギを大葉にくるんで焼いた一品は、もり山さんの定番で、龍子さんの好物。

さらに鰻の白焼きが出ては、日本酒を頼まないわけにはいかない。
posted by 城戸朱理 at 14:32| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

北鎌倉のフレンチ、ル・マルカッサンドール〜四谷シモンさんのポートレート撮影のあとで、その2

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ゴボウと冬瓜の冷たいスープは、乾燥させてから砕いたハモンセラーノを散らし、小松菜の泡が彩りを添えるという丁寧な仕事ぶり。

大地を感じさせる力強いゴボウの風味が後を引く。


魚料理は、金沢産ヒラメのムニエル。

驚くほど肉厚のヒラメで、アスパラソバージュとばい貝をあしらい、ルッコラのソース。


ワインのセレクトを今道子さんに任されたので、ギガルのシャトー・ヌフ・デ・パフ2003年を頼んだのだが、四谷シモンさんが唸るほど素晴らしいワインだった。


肉料理は北海道産仔牛とフォアグラのポアレは、フキのソースで、魚料理のルッコラのソースといい、太田成志シェフは香りの強い野菜の使い方が独創的で楽しい。


デセールは、マスカルポーネのムースにブルーベリーのアイスとベルギーチョコのムース


プティフルールとコーヒーで食事は終わったのだが、撮影に関係のない私まで今道子さんにご馳走になってしまった。

いいのだろうか?

今さん、ご馳走さまでした。
posted by 城戸朱理 at 12:43| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする