思潮社の「詩の森文庫」の一冊として、『吉岡実散文抄 詩神が住まう場所』が刊行された。
吉岡実が生前、残した散文集は『「死児」という絵』『土方巽頌』『うまやはし日記』の3冊。
その全散文のうちから、吉岡実が残した文章の、エッセンスを集成すべく編まれたのが本書である。
ぜんたいは3章で構成されており、第T章は、何らかの意味で、吉岡実の人生を語る文章、
第U章は、自らの詩作に関わるエッセイ、
第V章は、吉岡実が敬愛する詩家と交友について語った散文が、それぞれ、まとめられている。
解説には澁澤龍彦による「吉岡実の断章」を再録、さらに編纂を担当した私の書き下ろしである「詩神が住まう場所」が収録されているが、
私の解説の言葉が、吉岡さんの書物の副題として選ばれたことは、私にとっても嬉しい出来事であった。
リアリズムに徹しながら、ときに超現実的、反自然的な相貌を見せる吉岡実の特異な散文が、軽便な版本で読めるようになったことを喜びたい。
また、「詩の森文庫」に引き続き、『現代詩文庫 続続吉岡実詩集』の編纂作業も進行中で、収録詩篇、解説執筆者もほぼ決まり、
今となっては貴重な吉岡実と入沢康夫の対談や「吉岡実氏にテレビをめぐる15の質問」といったインタビューの収録も検討中である。