
目覚めれば、神田神保町のホテルの一室、
しかも、今日は土曜日である。
となると古書店を回らないわけにはいかない。
神田古書店街は日曜日は休みの店が多く、
いきおい土曜日には、遠くから古書店目当てのお客さんが集まるため、
店頭ワゴンに思いがけない本が、
サービスで安価に供されることがあるのだ。
もちろん、神田通ならば誰でも、そのことを知っているので、
開店と同時の午前中が勝負(?)となる。
神田古書店の店頭ワゴンでも、小宮山書店と田村書店は、
良質な本が多いことで知られており、
古本エッセイストの岡崎武志さんも、
この2軒の前にテントを張って暮らしたいと語っていたことがある。
私も田村書店の店頭ワゴンでは、
これまで、『田村隆一 詩と批評』全巻や
『フランス現代作家四人集』全巻を始めとして、
探していた本を何度か手に入れたことがあった。
今回は戦後まもなく出版されたオウイディウス『愛の技術』(思索社)や
『寺山修司全歌論集』(沖積舎)など全4冊をワゴンから選ぶ。
しめて、2200円。本というものは、なんと安いのだろうか!
田村書店のワゴンは、適宜、補充されるので、
通りかかるたびにチェックしなければならない。
さらに先日、未整理の本の山に探していた本を見かけた小宮山書店へ。
ところが棚には、お目当ての本は、見当たらない。
店員さんに尋ねたら、池袋で開催されているフェアーに持っていったとのこと。
すぐに電話で在庫を確認してもらい、宅急便で手配してもらうことにする。
小宮山書店の若い店員さんは、実に親切で、
古本屋にいることを忘れてしまうほどである。
古本屋といえば偏屈オヤジという図式も過去のものになりつつあるのだろうか。
小宮山書店では、ほかにシュルレアリスム関係のものなど5冊を購入。
古瀬戸珈琲店で、買った本をめくりながらコーヒーを飲み、再び、古本屋へ。
どんな種類の本を探しているかによって、
神田古書店街をどう回るかは変わるが、
私の場合、最近は美術関係の本をよく見ているので、
少し足を伸ばして、源喜堂など
美術関係の本が充実した古書店を回る。
結局、洋書の画集3冊を購入。
1980年にパリで刊行されたダリの画集は
ダリのオリジナル・リトグラフ一葉入り、
1975年に、やはりパリで出版されたマックス・エルンストの
コラージュやフロッタージュのパンフレットは、
コロタイプによる素晴らしい図版10点が、
手貼りで貼り込まれている。
写真のように表紙にも図版が貼り込まれ、
千部限定と部数は多いが、実に瀟洒で美しい造本の冊子である。
ほかに独英による写真集『ボイス・イン・アメリカ』を求めた。
かくして、購入書籍は全12冊、
配達を頼んだのが、1冊で、計13冊。
帰りの荷物は重いが、荷物が本となると気にならない自分が怖い。
帰宅すると吉祥寺の古書店に頼んだ戦前の
柳田国男の限定千部のエッセイ集など、2冊が届いていた。
数日前にもAmazonに注文した洋書1冊を含む3冊が届いたばかりだが、
私の場合、ただでさえ少ない稼ぎが、
こんなふうにして本か酒に消えていく。
深く反省してはみたが、本を開くと、
すぐに忘れてしまうので、同じことである。
その証拠に、今日、もらってきた目録に、
長らく探していた1984年刊行の『ヨーゼフ・ボイス 作品と資料』を発見し、
電話で、すぐに取り置きを頼んでいるのだから、始末に負えない。
この本はワタリウム美術館が出版したものだが、
84年と言えば、ボイスが、
西武美術館での「ヨーゼフ・ボイス展」のために来日した年であり、
私がボイスの作品に初めて触れたのも、その展覧会でのことだった。
その2年後、ボイスは世を去ることになる。
来年には、お金を貯めて、神田のホテルに一週間ほど滞在し、
毎日、午前中と夕方に古本屋を回って、本を探す毎日を送り、
結果をブログでレポートしたいと思っている(?)。
しかし、それが実現するためには、時間的余裕と経済的余裕の
両方が必要となるわけで、
この余裕というものが、私にはいつもないのだから、
実現できるかどうかは分からないが。



