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城戸朱理のブログ: Edge荻原魚雷篇

2015年12月16日

Edge荻原魚雷篇



新刊書店が次々と閉店し、この10年で半減するなか、一方で、誰でも参加できるひと箱古本市に見られるように、静かな古本ブームがひろがりつつある。

このブーム、古本の新しい楽しみ方を示した同人誌「SUMUS」の功績が大きい。


「SUMUS」には、岡崎武志、林哲夫、山本善行氏らが依り、これまで、テレコムスタッフ制作のアートドキュメンタリーEdgeでは、岡崎武志篇、林哲夫篇を制作、その生活に根ざした古本哲学を紹介してきた。

今月は、それに続く荻原魚雷篇が完成間近である。


荻原魚雷さんは、辻潤との出会いから、アナーキズムに目覚め、大学を中退して活動家になった。

生計はライター業だったが、バブル崩壊後の不況のあおりで次第に仕事がなくなり、 運動にも挫折。

そんなとき吉行淳之介のエッセイを読んで、自分の生き方を考えたという。

生理的な皮膚感覚で世界を触知するという吉行淳之介の考え方は、荻原さんの生きるうえでの指針となり、どうせ売れないのなら好きなことを書こうと古本エッセイを書くようになったのだとか。


番組では、京都における古本のトークイベントで、岡崎武志さんを始めとする古本の猛者が集う場面があるが、岡崎さんが荻原さんを「新しい思想家」と評していたのが印象深い。

観念的なアナーキストから、つねに漠然とした不安を抱えながらも、生活者として地に足がついた思考と、その実践へ。

生活のなかから確かな手触りを探して、古本屋通いを続ける、その姿は、たしかに新しい思想家の名に値する。


実は、荻原魚雷さんはEdgeへの出演を躊躇されたのだが、岡崎さんの説得で出演に踏み切ったという経緯がある。

岡崎武志さんに感謝したい。


ちなみに私も、荻原さんの著作は、最新刊だけは未読だが、『書生の処世』までの既刊は、すべて読んでいる。

よく登場するのは、前述の辻潤、吉行淳之介のほかに、作家だと色川武大、詩人だと鮎川信夫と天野忠、それに辻征夫で、それぞれの著者との出会い方が面白い。

天野忠さんは、自ら古本屋をされていたので、古本好きが、その作品に惹かれる傾向があるようだ。


荻原魚雷篇は、及川俊哉篇、榎本櫻湖篇に続いて、平田潤子ディレクターの演出である。


一方、京都の流響院を舞台に撮影が進んでいる井上春生監督によるH(アッシュ)吉増剛造篇と並行して、伊藤憲ディレクターによるEdge Special吉増剛造篇も撮影が佳境を迎え、荻原魚雷篇の試写があったとき、吉増さんと伊藤憲ディレクターは3泊4日の南相馬ロケの最中だった。

吉増さんは鎌倉でのローライ同盟発足総会の翌日に、南相馬に向かったことになる。

こちらも年明けには、紹介できるだろう。
posted by 城戸朱理 at 10:00| Edge | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする