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城戸朱理のブログ: 書斎についての本

2016年01月07日

書斎についての本

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私が若いころ、男性誌で「書斎」の特集をすれば、必ず売上が伸びると出版業界では言われていた。

いつかは書斎を持つという夢が、世の男性に共有されていたのだろうが、その傾向は、2000年ごろまでは続いていたような気がする。

雑誌の特集のみならず、知的生産を主題とする新書などでも、必ず、書斎の作り方に章がさかれていたものだった。


それがパソコンの普及、さらには電子書籍の登場によって、書斎という空間自体の必要性が薄れるとともに姿を消していき、近年では、まったくと言っていいほど見かけない。


ときおり、古本屋の棚に、そうした本を見かけると、懐かしさもあって手に取ってみるのだが、たしかに昔日の感がある。


エッセイスト、林望さんによる『書斎の造りかた』も、そんな一冊。

光文社のカッパ・ブックスで、初版は2000年2月29日の刊行。

3月30日には2刷が出ているので、それなりに売れたのだろう。


「知のための空間・時間・道具」という副題からも分かるように、まずは空間の確保、時間の使い方から始まって、書くノウハウや文章の技術などにまで及ぶ内容なのだが、
「パソコンの使いかた」という一章があり、「これからの書斎は、まずパソコンありき」と林望先生が宣言していることからして、パソコンの普及期であったことを改めて確認することになる。


林望先生の書斎観の特徴は、「書斎=男の城」という旧来の思考法を否定し、合理主義に徹しているところだろう。

その意味ではプロの書斎術を明かすものなのだが、思わず膝を打ったのは、「名著は捨て、稀少本だけとっておく」というくだりだった。

岩波文庫に入るような名著は、いつでも手に入るが、雑本や雑誌は残らないし、あとで探しても見つからないことが多い。

だから、片々たるものこそ取っておくべきだという主張なのだが、このあたりは古書の達人たちが指摘するところでもある。


菅原道真の『菅家三代集』に収められた菅公自身の詩文集『菅家文草』のなかに「書斎記」という文章がある。

京都、左京五条高辻の菅公の屋敷の西南、広さはわずか「一丈餘」、およそ四畳半ほどの小部屋が、菅原道真の書斎「山陰亭」だったのだとか。


要は、何をするか、何をなしたかであって、目的によって、書斎は自ずから形を成していくものなのだろう。
posted by 城戸朱理 at 08:18| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする