
田中庸介氏を編集・発行人とする「妃」18号に、鎌倉に生きた日本画家、瓜南直子さんに寄せる月読亭羽音さんの連作詩「游心記」が掲載されている。
「游心記」の語るところによると、東大阪在住の作者は、今年の3月5日に、姫路で見た「画家の詩、詩人の絵」展で、瓜南直子の「夜の図鑑」「あきつしま」「望月」、3点の絵と出会い、閉館時間まで、絵の前から動けないほど魅了されたのだという。
帰宅して、画家のブログを探り当て、瓜南さんの言葉に、絵画に、さらに酔った月読亭羽音さんは、瓜南さんが通い、看板を描いた店が鎌倉にあることを知り、3月25日に北鎌倉を訪ねる。
その店とは、侘助。
店主の菅村睦郎さんは私の高校の先輩で、作家、藤沢周さん、香港でブレイク中のアーティスト、稲田吾山さんらが集う。
瓜南直子さんや伴清一郎画伯もかつては常連で、睦郎さんの依頼を受けて瓜南さんが描いた看板が、今でも掲げられている。
月読亭羽音さんは、侘助に寄られたのだろうか?
「妃」も創刊から20年以上を経て、18冊目。
編集・発行人の田中庸介さん以外の同人の顔ぶれは、創刊当時とはすっかり変わってしまったが、ベテランの鈴木ユリイカさんや文化人類学者でもある菅啓次郎さんも加わり、仲田有里、後藤理絵、広田修氏ら、幅広い世代の同人を擁する同人誌になった。
田中庸介氏は、東大医学部に籍を置く研究者でもあり、その論文は世界的に権威のある学術誌「ニュートン」にも掲載されているが、ひとつのテーマの研究には、およそ10年がかかるのだという。
医学と詩をともに生き抜く姿勢が、田中さんの詩にも反映されている。