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城戸朱理のブログ: 古本屋で買った「思い出の一冊」

2016年12月15日

古本屋で買った「思い出の一冊」

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ランチョンでの忘年会では、私の提案で、各自が古本屋で買った「思い出の一冊」を持ち寄ることにしたのだが、これがたいへん刺激的だった。


田野倉康一くんは、渋沢孝輔『不意の微風』。

一時期、大森に広瀬大志くんが住んでいたころ、よく大志くんのアパートに集ったのだが、かつては大森にあった詩書専門の古書店、若葉書店で購入したものだという。

たしかに、若葉書店には、連れ立って、よく立ち寄ったものだった。

私は、片桐ユズル・中山容訳『ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ詩集』(国文社)などを、若葉書店で見つけた記憶がある。



田野倉くんは、神田・田村書店の店頭ワゴンで掘り出した朝吹亮二『封印せよ、その額に』と、渋沢孝輔『漆あるいは水晶狂い』のオリジナル・ビニールケース入りも考えたそうだが、どこにあるのか、見つけられなかったそうだ。

蔵書が増えすぎると、どうしても本が見つからないことが増えるが、困ったものである。


そして、広瀬大志くんはというと――

西脇順三郎の没後、仲間うちで西脇さんの詩集を競って探した時期があったのだが、そのころに求めたという『えてるにたす』を取り出した。

西脇さんの戦後の詩集では、もっとも手に入りにくい詩集であり、『失われた時』と並ぶ傑作長篇詩である。

西脇さんの絵を表紙にあしらった装幀とともに、憧れの本だったことを思い出す。


私は、言い出した責任もあるし、話題提供のために5冊を持参した。

「洗濯船」同人で鎌倉に田村隆一さんを訪ねたときに、サインをいただいた『緑の思想』と、鎌倉の游古洞で買った『四千の日と夜』、
神田・田村書店で求め、渋谷のTOPで吉岡実さんからサインをいただいた『静かな家』と、吉岡さんの没後、形見として陽子夫人からいただいた『僧侶』、さらに、神田・玉英堂書店で出会った萩原朔太郎『猫町』初版である。


吉岡実『僧侶』を手にして、大志くんは興奮の極みに。

「今、いちばん欲しい本なんだ。
やっぱり、俺も買いに行こうかな!」


萩原朔太郎『猫町』は、抜群のコンディションで、川上澄夫によるモダンな装画と装幀に、藤井一乃さん、遠藤みどりさんが感嘆していた。


そして、真打ちは、やはりメンバーのなかでも際立った愛書家である高貝弘也くんである。

高貝くんが、梱包材のなかから慎重に取り出したのは、なんと、瀧口修造『不知抄』(限定2部!)ではないか!?

発行は、画餅荘。

雲母版板3枚と偏光版2枚、魚皮にシルクスクリーンでプリントした、野中ユリによる私家版である。

書物というより、もはや美術作品だが、常識的に考えて、一冊は瀧口さん、もう一冊は野中ユリさんの手元にあったものだろうから、そのどちらかが市場に流れたと考えるしかない。

それに高貝くんが出会ったわけだが、やはり、本というものは、本が人を選ぶということがあるらしい。

目の前に『不知抄』がある。

信じられないとは、このことか。


そして、興奮のさなか、今度は書物から始まる第二弾の連詩を始めることになったのだった。
posted by 城戸朱理 at 08:18| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする