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城戸朱理のブログ: 志賀英夫『戦後詩誌の系譜』(詩画工房)

2016年12月17日

志賀英夫『戦後詩誌の系譜』(詩画工房)

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田野倉康一くんが、朝吹亮二さんの第二詩集『封印せよ、その額に』を神田古書店街の田村書店の店頭ワゴンで掘り出した話は、先に紹介したが、
田村書店の店頭ワゴンは、古本エッセイでおなじみの岡崎武志さんが、その前にテントを張って暮らしたいと語ったほど、良書が多い。

とりわけ、土曜日は次々と本が追加されるため、土曜に神田古書店街を回っているときなどは、日に何度か覗いてみることになる。


近年、古書値が高騰している朝吹さんの初期詩集が見つかることは、さすがにないだろうが、今でも見逃せない本が少なくない。


私も『封印せよ、その額に』は、刊行当時、新刊で入手したが、高貝弘也、田野倉康一、広瀬大志と、古書店通いを欠かしたことがない詩友でさえ、いまだに朝吹さんの第一詩集『終焉と王国』は、誰ひとり見たことがないという。

こうなると幻の詩集だが、いずれ、手にしてみたいものだ。


高貝、田野倉、広瀬くんと連詩を書き上げ、忘年会の前に、何軒か古本屋を覗いたのだが、田村書店のワゴンで、気になる本があった。

写真の志賀英夫『戦後詩誌の系譜』(詩画工房)である。

未見の本だったので、開いてみたのだが、驚いた。

これが、太平洋戦争の敗戦の昭和20年(1945)から、昭和64年(1989)までに、刊行された同人誌、約3000点の創刊号を表紙の書影とともに紹介するものだったのである。

データは、発行の都道府県、編集発行人、発行所、所蔵、執筆者とミニマルなものだが、書影が掲載されているというところに驚きを禁じえなかった。


北上の日本現代詩歌文学館では、同人誌も2部ずつ保存しているが、同館設立前は同人誌を保存する公的機関は存在しなかった。

同人誌というものは、結局、その雑誌の執筆者以外の手元には残らないというのが現実である。

もし、送られてくる同人誌を詩集とともに全て保存しようとしたら、20年ほどで、3〜4万冊に達することだろう。

これは、町の開架式図書館レベルのスペースが必要になる冊数であり、個人が自宅で保管できる数ではない。

つまり、同人誌というものは、発行部数の99%、あるいはそれ以上がが廃棄され、残らない運命にあると言っていい。

それだけに、『戦後詩誌の系譜』のような本が成り立つには、個人の献身的な努力が必要なことになる。

本書に収録されている同人誌の約半数は、北海道・美幌在住の井谷英世氏所蔵のもので、さらに中村不二夫氏の協力によって、本書は成立したらしい。


「あとがき」によると、本書に先立って『戦前の詩誌・半世紀の年譜』が、平成15年に刊行されているという。

これは、阪神淡路大震災で倒壊した芦屋の吉沢独陽氏の書庫にあった戦前の詩誌を寄贈された著者が、それをもとに編纂したもの。

ともに労作と言うしかないが、歴史のなかに埋もれかねない詩人たちの群像を記録に留めることで、時代の熱気を伝える本書のような仕事は貴重だと思う。
posted by 城戸朱理 at 10:48| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする