サーチ:
キーワード:
Amazon.co.jp のロゴ
城戸朱理のブログ: 『向田邦子の手料理』(講談社)

2017年01月21日

『向田邦子の手料理』(講談社)

IMG_5291.jpg



脚本家としても活躍した直木賞作家、向田邦子は、文筆業のかたわらで、女性がひとりでも気楽に立ち寄れる店を作ろうと、妹の向田和子とともに、赤坂に「ままや」を開店したほど料理が得意だった。

本書は和子さんによる監修で、料理も和子さんによるもの。

初版は、1989年に刊行されたが、私が持っているのは、1994年刊の16刷だから、どれだけ人気があったか分かる。


この本は実に丁寧な編集で、向田邦子の著作から、食べ物に関する文章と和子さんの姉の思い出話をあちこちにちりばめ、生前の向田邦子という作家の姿が、ありありと浮かんでくるところがある。


料理が得意なだけに器好きでもあり、向田邦子が集めた器も紹介されているのだが、中国龍泉窯の青磁や古伊万里などの骨董から、北大路魯山人の爼板皿、醤油差しまで、実に多彩で、楽しい。


向田さんは「私は、ひとり暮らしのくせに、膳の上に品数が並ばないとさびしいと思うたちである」と語っており、これは酒好きならばうなずけるところだが、それだけに掲載されている料理の品数も多い。

家庭にまでフレンチやイタリアン、エスニック料理が入り込んだ今から見ると、どこか懐かしさを感じる昭和的なレシピが多いが、手間をかけずに美味しいものを作るという姿勢が貫かれているので、実用書としても役に立つ。

一見、ポタージュに見える「じゃが芋スープ」など、すり下ろしたジャガイモを煮るといった手の抜き方が、向田流。


サツマイモと栗のレモン煮やクレソン炒飯、白身魚のマヨネーズ焼きや鶏肉のレモン風味炒めなど、向田さんが考案したとおぼしきレシピも多く、よほどの料理好きだったのだろう。


向田邦子は、旅先の台湾で、飛行機事故のため、51歳で亡くなった。

第83回直木賞を受賞したのは、その前年のことだが、受賞作は、雑誌連載中の連作短編。

単行本化を待たずに候補になったこと自体、異例だが、選考会では、山口瞳が、向田邦子はもう51歳、いつまで生きてるか分からないと発言し、授賞がきまったそうだ。

本当は、そのとき向田さんは50歳だったのだが、51歳で亡くなるとは誰も想像できなかっただろう。
posted by 城戸朱理 at 08:06| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする