


澁澤龍彦邸での春のパーティーのために、コッコ・バン(鶏の赤ワイン煮)を仕込んだ。
コッコ・バンは、フランスのポピュラーな家庭料理で、家によって味つけが違う。
その意味では、フランスの家庭の味ということになるが、私のレシピは、ごく単純。
骨付きの鶏腿肉に塩・胡椒してバターで焼き色をつける。
かたわらで、タマネギのみじん切りを透明になるまで炒め、鶏腿肉、小麦粉、赤ワイン1本を加えて、ワインが3分の1になるまで煮込む。
そこに水とローリエを加えて、さらに煮込み、塩で調味して完成。
最後に炒めたエリンギを入れた。
アシスタントは、バンビことパンクな彼女である。
バンビに、ストックしてあるワインから、1本選ぶように言ったら――
「この汚いラベルのワインを使ったら、どうかな?」
・・・
それは、1982年と89年のヴィンテージワインではないか!
「じゃあ、この地味なラベルの新しいワインにするよ!」
バンビが手にしたワインを見たら、ジュヴレイ・シャンベルタン2013だった!?
これも、煮込み料理に使うワインではないのは言うまでもない。
もし、バンビに任せたら、このワインを使われたかも知れない。
パンクだから仕方がないが、より厳重な警戒が必要である。