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城戸朱理のブログ: 吉岡実『薬玉』『ムーンドロップ』のこと

2017年06月02日

吉岡実『薬玉』『ムーンドロップ』のこと

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吉岡実晩年の詩集『薬玉』『ムーンドロップ』の2冊は、今のところ、古書で求めるか、『吉岡実全詩集』を買わないと、読むことが出来なくなっている。

『全詩集』となると、10万を超える古書値がつくことがあり、『薬玉』『ムーンドロップ』も、かなりの古書値を呼ぶ。

若い世代の人たちに、手軽に後期吉岡実が読めるようになるためにも『現代詩文庫 続々・吉岡実詩集』が出るといいのだが、今のところ、頓挫したままだ。

実は10年ほど前に、刊行の企画はあった。

『現代詩文庫 続・吉岡実詩集』の裏表紙の推薦文を私が書かせていただいたあと、思潮社の小田久郎会長から打診があり、『薬玉』『ムーンドロップ』を中心に、『現代詩文庫』未収録作品も収録する一冊を私が編纂したのだが、事情は分からぬものの、企画自体が頓挫してしまった。


次の世代に、吉岡さんの晩年の詩を手渡す機会が失われたのは、今でも残念だ。


吉岡実といえば、初期の『静物』と『僧侶』、中期の引用の詩学の達成である『サフラン摘み』と『夏の宴』が頂点を形成しているが、後期の『薬玉』と『ムーンドロップ』も、それらと並ぶ高峰であり、シュルレアリスムが土着化し、神話と通底するかのような趣きをたたえている。


これは『吉岡実の肖像』(ジャプラン)にも書いたが、装幀も手がけた吉岡さんは、装幀用の麻布である特上シュランクをこよなく愛していた。

『薬玉』はイタリア製の深みがある紫の紙が表紙になっているが、背に使われているのが、特上シュランクであり、『ムーンドロップ』、さらには『吉岡実全詩集』も特上シュランク装になっている。


また、『薬玉』には、通常の版以外に表紙の色が違う著者本、さらには限定の特装版もあり、愛書家を悩ませている。


写真が、『薬玉』特装版で、限定40部。

ダンボールの保護函を開けると、濃紫のクロース貼りの箱に本が収められている。

表紙は、小野麻里による手描染布で背革という造本。

本文紙は、耳付きの雁皮紙で、吉岡実による毛筆書きによる一葉が挿入されている。


20代の私には高い買い物だったが、当時でも目にすることがなかったほど凝った造りで、吉岡さんの没後、陽子夫人から形見として贈られた「静物」の自筆ペン書き原稿、さらには『僧侶』とともに愛蔵している。
posted by 城戸朱理 at 06:46| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする