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城戸朱理のブログ: 本好きのための時代小説〜平谷美樹の新刊

2018年01月18日

本好きのための時代小説〜平谷美樹の新刊

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本好き、とりわけ古書にも関心がある本好きは、ミステリーであれ何であれ、本が関係する本を好む傾向があるようだ。


TVドラマ化された三上延『ビブリオ古書堂の事件手帖』などがいい例だが、事件に古書がからむだけではなく、北鎌倉にある古書店の主人、篠川栞子が清楚な美人で古書通というあたりが、このシリーズの新機軸だろう。


もちろん、先駆的な作品としては、書誌学者、紀田順一郎による『鹿の幻影』『古本屋探偵の事件簿』『魔術的な急斜面』『第三閲覧室』など、一連の古書ミステリーがある。

こちらは、よりコアな古書好き向けで、『ビブリオ古書堂』のようにお洒落さや軽みは、欠片もない。

登場するのは、狂気を帯びた古書マニアばかりで鬼気迫るものがある。


私は、紀田順一郎の古書ミステリーを創元推理文庫で読んだが、古本屋で初版を見かけると、つい買ってしまう。


古書がらみといえば、梶山季之『せどり男爵数奇譚』も外せない。

「せどり」とは転売目的で本を買うことで、それに従事する者を「せどり師」と呼ぶ。

初版本ブームが起こった1970年代には、古書店をわたり歩いて転売を繰返し、ひと月で大卒の年収分を稼ぐような猛者もいたらしい。



一方、アメリカにも古書をめぐるミステリーがある。

元デンバー警察の刑事で古書店主となったクリフォード・ジェーンウェイが古書をめぐる事件を解決するジョン・ダニングの『死の蔵書』から始まる全5作のシリーズだ。

こちらはアメリカの古書事情が分かるあたりも魅力で、私も読み耽ったが、こうして考えると、古書をめぐるミステリーは、ときおり目にするものの、今や新刊書店に必ず棚があるほどブームの様相を呈している時代小説には、さすがに本は絡めにくいらしい。


そう思っていたので、出久根達郎『御書物同心日記』を読んだときには驚いた。

江戸城内にあって将軍家の蔵書を収めるのが、紅葉山文庫。

徳川幕府初代の徳川家康が無類の愛書家だっただけに稀本、珍本があふれ、三代将軍、家光のときに御書物奉行、御書物同心が置かれて管理・保護するようになった。


『御書物同心日記』は、御書物奉行の業務記録である『御書物方日記』をベースに書かれた連作短編集で、さすが元古書店主の直木賞作家ならではの着眼と唸ったのを思い出す。


紅葉山文庫を舞台にした小説は、出久根達郎さんでなければ書けないだろうと思っていたら、最近、また紅葉山文庫を舞台にする時代小説が登場した。


それが、平谷美樹『江戸城御掃除之者 地を掃う』(角川文庫)である。


文庫書き下ろし時代小説のブームのおかげで、かつてのように、町奉行所の与力や同心ばかりではなく、武士であれ町人であれ、
さまざまな職業が小説に登場するようになったが、平谷美樹さんの『江戸城御掃除之者』シリーズは、なんと江戸城本丸御殿を中心に、あたり一帯の掃除を任務とする武士の物語。

こんな仕事もあったのかと感心したが、その第二弾の『江戸城御掃除之者 地を掃う』の第一話「楓山秘閣御掃除御手伝の事』は、紅葉山文庫から紛失した書物をめぐる話で、そこに御掃除之者がどう絡むのかは、読んでのお楽しみ。

帯の「七人の侍が難題をスッキリ片付け」という惹句には思わず笑ってしまったが、本書に登場する「七人の侍」は、たしかに難問は解決するものの、お掃除をするだけなので、念のため。


また同じ作者による『草紙屋薬楽堂ふしぎ始末』(だいわ文庫)は、文政時代を舞台に、知恵者の女戯作者、鉢野金魚(はちの・きんとと)が、
事件の謎解きに迫るというシリーズで、こちらも江戸時代の出版事情に詳しく触れており、本好きにはお薦めの時代小説だ。
posted by 城戸朱理 at 09:03| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする