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城戸朱理のブログ: 今年のお雑煮

2020年01月03日

今年のお雑煮

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大晦日のうちに、鶏もも肉を炒め煮にし、小松菜を下茹でして、出汁を取り、お雑煮の用意をしておいた。


今年は私が作ることにしたが、焼いた角餅に鶏肉と小松菜だけの東京風のお雑煮にした。

三つ葉を散らし、柚子を吸い口にしたが、戦前の東京のお雑煮は、鶏と青菜、もしくは青菜だけというものだったらしい。


戦後の女性ライターの草分けと言われ、白洲正子さんと親交があった三宅菊子さんは外掘り通りの外は、もう東京都下と思っている生粋の東京っ子だったが、東京のお雑煮は鶏と青菜、人参さえ余計というのが持論だった。

吉田健一は、東京のお雑煮は青菜だけと語っている。



「お正月の雑煮というのは場所によって作り方がかり違うようで、その中には話だけ聞いていると雑煮ではなく凡そ色々なものが入った一種のごった煮ではないかと思うのがある。そして一体に東京のよりも餅の他に入れるものが多いらしいが、これは東京のが餅以外には菜っ葉位しか入らないのであるからそれよりも具が少ない雑煮はあり得ないとも考えられる。併しこの東京の雑煮はこれで旨い。(中略)正月の食べものは何かあればある程新年が芽出たく感じられるものであっても雑煮はこの東京の簡単で新鮮なのが湯気を立てているのに限ると前から考えている。尤も誰でも自分が生まれて育った所の仕来たりに執着するものであるから本当は各種の雑煮を食べ比べでもしなければ確かなことは言えない訳である。
併しそれをしたいとも思わない位東京の雑煮のちゃんと作ったのは旨いものである」
(「東京の雑煮」、『舌鼓ところどころ/私の食物誌』、中公文庫)



吉田健一の父は、言うまでもなく吉田茂首相だから、吉田家が貧しくて青菜だけの雑煮だったはずはなく、それがかつての東京の雑煮だったのだろう。


私の実家では、お正月は鶏肉、青菜、人参などの東京と同じような雑煮と小豆餅が並んでいたが、甘い小豆餅が正月に欠かせないのは東北地方の慣わしで、三賀日を過ぎると青菜だけの雑煮を作ることがあった。

これは父が好んでいたが、大根おろしや納豆を添えて、からみ餅にして食べたものだった。


もっとも雑煮なのだから、雑炊と同じく、どんな具材でもいいわけで、地域差もあれば家庭ごとの違いもある。

違うほうが面白いし、一年中売っているにもかかわらず、正月に食べる雑煮の餅が、いちばん旨いような気がする。
posted by 城戸朱理 at 15:02| 美味しい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする