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城戸朱理のブログ: 永澤康太「すべてのうたをわすれて あたらしいうたをうたう」

2020年06月19日

永澤康太「すべてのうたをわすれて あたらしいうたをうたう」

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3枚、あるいは4枚の紙をふたつ折りにすると、冊子が生まれる。

そこには数篇の詩が印刷されている。


永澤康太による「すべてをわすれて あたらしいうたをうたう」は簡素でありながら、実に魅力的なたたずまいを見せる。

作品は、日常のなかで、その常同性に抗いつつ、生命の光芒を探すもので、ここに至って、作者は自分なりの詩法を獲得した感がある。



傷は、傷のままで残った
かさぶたにはならなかった
とめどなくながれた結果
内と外が入れ替わった
魑魅魍魎があふれだした
蜘蛛の糸をつたって這ってでた
じゃぶじゃぶ池の真ん中で
遊んでた娘もまつさおに染まった
(「蒼白」より)




どの詩にも諦念がわだかまっているように思えるのだが、決して、そこに留まろうとしているわけではない。

作者の家庭や生活をうかがわせる詩行も散見するが、生活そのものを語ろうとしているわけではない。

現代の閉塞感と通低する息苦しさのなかで、狂気に傾きがちな心を抱えながら、正気を保とうとする静かな闘いの記録として読んだ。
posted by 城戸朱理 at 10:36| 詩誌・詩集評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする