中国の秋の味覚といえば上海蟹。
中国人が上海蟹を珍重すること、
日本人にとっての松茸以上だというのだから、面白い。
上海蟹の正体は、陸封され、淡水で育ったワタリガニ。
小振りなので身は少なく、味は淡白。
中華料理の味付けからイメージする
中国の人々の好みからは縁遠い感じがするのだが。
ただし、このカニ、味噌の味わいが素晴らしい。
淡水のカニだけに磯くささはまるでなく、
自然な甘みだけで出来ているような風味、とでも言ったらいいだろうか。
以前、銀座は数寄屋橋の軍鶏料理の名店として名高い
バードランド店主、和田利弘氏と上海蟹を食べるために
返還前の香港に行ったことがある。
朝から晩まで、上海蟹で飲み続けるという、
とんでもない旅だったが、今になると懐かしい。
そのとき中国系のデパートに入ったら、
上海蟹が逃げ出し、もの凄いスピードで直進するのを目撃したことがある。
カニは横ばいと思っていたら、どうやら上海蟹だけは違うらしい。
ちなみに若手料理人として雑誌やテレビでもお馴染みの和田さんは、
私にとっては、酒と料理の師匠で、
食文化ジャーナリストの平松洋子さんと一緒に
和田さんの結婚式のときには、
司会をつとめたほどの親友である。
この話は、また、いずれ。
話を上海蟹に戻すと、このカニを活きたまま
紹興酒に漬け込んだのが「酔っ払い蟹」。
ふつうは、脚を縛ってネギやショウガと一緒に蒸し上げる。
黒酢を添えると、なお風味を増すように思う。
ここまで書いたところで彼女が記事を覗きこみ、
「まだ上海蟹を食べたことがない彼女に
近々、食べさせてあげようと思っている」と書いて、
と騒ぎ出し、執筆できなくなった。つづく。


